The Rolling Stones / Stripped (1995)

The Rolling Stones

Stripped

Virgin : CDV 2801

1. Street Fighting Man
2. Like A Rolling Stone
3. Not Fade Away
4. Shine A Light
5. The Spider And The Fly
6. I’m Free
7. Wild Horse


8. Let It Bleed
9. Dead Flowers
10.Slipping Away
11.Angie
12.Love In Vain
13.Sweet Virginia
14.Little Baby

僕がローリング・ストーンズに興味を持ち出したのは、ブルーハーツの影響からだ。
90年代に入ったばかりの中学生の頃だから、ちょうど初来日の時期。
それから本格的に彼らに夢中になり、60~70年代の名盤を(当時再発されたばかりの)リマスターCDで集め始めたのは、高校を出て就職してまとまったお金が使えるようになった19~20歳くらいの頃。
そんな時期にリリースされたのが、このアコースティックなセルフカバー・アルバム「STRIPPED」だ。

ライナーによると、元々は「Still Life」「Flashpoint」などのライブ・アルバムと同じく、新作(この時は「Voodoo Lounge」)リリース後のワールドツアーを収録したライブ盤の企画だったらしいけど、メンバーで相談した結果「今回はちょっと趣向を変えてみよう」という考えに基づいて、ライブとスタジオ録音半々のアコースティック・セルフカバーアルバムとなったらしい。
当時のエリック・クラプトン「Unplugged」の大ヒットで、原点回帰の意味でのアコースティック・スタイルが見直されたことも影響しているかもしれない。

はっきり言って、僕はこの「STRIPPED」をストーンズの作品で最も愛聴している。
オリジナルアルバムではない・企画盤にしても選曲が地味・60~70年代の全盛期の作品ではない・ビルワイマンも脱退した後、などなど数々のネガティブ要素をまるで問題にしない円熟味あふれ出る演奏と歌の味わい深さは、エンドレスでリピートしても全く聴き飽きない魅力を放っている。

代表曲「(I Can’t Get No)Satisfaction」「Jumping Jack Flash」などと同様にストーンズの攻撃性の象徴とも言える1曲目「Street Fighting Man」は、ここでは伸びやかなアコギの響きが朝日のような爽やかさを感じさせる。
続く、僕も昔からずっと大好きなボブ・ディランのカバー「Like A Rolling Stone」は、ディランのオリジナルと同様にオルガンの音色がひたすら心地よい。「ストーンズが今更ディランのカバーなんて」と、当時のストーンズ・ファンからは批判があったらしいけど、数多いこの曲のカバー・ヴァージョンの中でも最高の出来だと僕は思う。
他には「Not Fade Away」「I’m Free」などの60年代の楽曲や、「Shine A Light」「Wild Horse」「Sweet Virginia」などの70年代レイドバック期の楽曲、「The Spider And The Fly」「Little Baby」などのブルース・ナンバーなどなど選曲自体は地味だけど、ここで聴けるその演奏と歌の味わい深さは、それぞれのオリジナルのクオリティを凌駕している気さえする。
特に、冒頭のミスが程よいアクセントになっているロバート・ジョンソンのカバー「Love In Vain」で感じる、どこまでも深い渋みは絶品の一言。「Let It Bleed」に収録されているオリジナルの素朴さも良いけど、僕はこっちのヴァージョンのほうが遥かに好きだ。
地味な選曲であるのはアコースティックな質感が似合うものを選んだからなんだろうけど、もしここにライブの定番である「Brown Sugar」「Start Me Up」が入っていたら興ざめしていたかも知れない。
このときの新作「Voodoo Lounge」の楽曲も外しているのも良いと思う(あれはあれで傑作アルバム)。

やはり、この時期の彼らだから、というのがあるかも知れない。
ビートルズの後塵を拝し切磋琢磨した60年代から人気・音楽共に全盛期である70年代、そしてメンバー間の対立が表面化した80年代から解散危機を乗り越えて安定期に入った90年代のこの時期は、体力的にも経験的にも程よく脂が乗っていて全体的に”余裕”があり、聴いていてなんだかホッとするのだ。
むしろ、この時期より「Hackney Diamonds」をリリースした近年のほうが「まだまだいけるぜ」という気概がほとばしっていてエッジが効いている気がする(それはそれで凄いけど)。
そのあたりの、この時代の彼ら特有の”余裕”は、この作品のセッションやライブの模様を収録した映像作品「Totally Stripped」を観ても、非常によく伝わってくる。

昔からこのCDは、僕にとってはドライブに欠かせない1枚だ。
ドライブに限らず、休日の朝にノンビリするとき、夜に自室で本を読みながら、ソロキャンプのときに焚き火にあたりながら、など色々なシチュエーションで聴いてきたし、これからも聴き続ける。
「ストーンズで最も愛聴するアルバム」の回数は、今後もずっと更新し続けるに違いない。

2025.2.19