Johnny Thunders
Hurt Me
New Rose Records : ROSE 26
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side A 1. Sad Vacation 2. Eve Of Destruction 3. Too Much Too Soon 4. Joey Joey 5. I’m A Boy I’m A Girl 6. Go Back To Go 7. I Like To Play Games 8. Hurt Me 9. Illagitammate Son Of Segovia 10.It Ain’t Me Babe side B 11.Diary Of A Lover 12.I’d Rather Be With The Boys 13.You Can’t Put Your Arms Around A Memory 14.She’s So Untouchable 15.Ask Me No Question 16.She’s So Strange 17.Lonely Planet Boy 18.M.I.A. 19.Cosa Nostra |
僕は、寝る時に音楽を流すタイプだ。
大抵は自分で選曲したプレイリストをスリープで流すが、既存のアルバムをCDデッキに入れることもある。
ニール・ヤングの「After The Gold Rush」ザ・バンドの「Music From Big Pink」などアメリカン・ロックの名盤や、ビル・エヴァンス・トリオ「Walts For Debby」マイルス・デイヴィス「Round About Midnight」などのジャズ、シド・バレット「Mad Cap Laughing…」Nick Drake「Pink Moon」などのアシッド・フォークあたりが、僕のお気に入りの”スリーピング・ミュージック”である。
それらの中で、比較的かける度合いが高いのが、このジョニー・サンダースの弾き語りアルバム「Hurt Me」だ。
いやむしろ、寝る時にしかかけない、と言っても過言ではない。
僕は、自分の性格上どちらかというとゴシップとは無縁な、真面目で謙虚なミュージシャンをリスペクトする度合いが強い。
海外・国内ミュージシャンで、それぞれ最もリスペクトするジョー・ストラマーと佐野元春はいずれも、音楽に対する姿勢やファンに対してひたすら真面目で謙虚だ。
もちろん、ロックなんて常識からはみ出してナンボであり品行方正なんてつまらないが、傷だらけになりながら自分を律して信念を貫く奴は、いつでもひたすらカッコいいに決まってる。
その反面、才能がありながらもだらしなくてメチャクチャな奴、にも妙に惹かれてしまうことがある。
その筆頭がシド・バレットであり、ジョニー・サンダースだ。
“パンク・ロックの元祖”と称されるニューヨーク・ドールズのギタリストとしてデビューしたジョニーは、いわゆるバッドボーイ・ロッカーの代名詞だ。
愛機の黄色いレスポールJr.を猥雑に振り回して弾き出されたワイルドな音と、伸びやかで線の細い声質ながら狂気を感じさせるシャウトは、没後30年以上経った今でもリアルなロックを求めるリスナーを魅了し続けている。
そのワイルドなロックンロールを得意とする彼が、全編アコースティック弾き語りのアルバムをリリースした当時、その意外性に驚きながらも多くのファンに受け入れられ、今では大傑作という評価を得ているのはやはり、その非凡なセンスとソング・ライティングの才能だろう。
「Chinese Rock」「Born To Lose」といったオリジナルと同じくらい「Great Big Kiss」「Do You Love Me?」といった50’sオールディーズやR&Bのカバーが評価されているジョニーだが、それらの影響から身につけたメロディーメイカーとしての才能が「You Can’t Put Your Arms Around A Memory」「Diary Of A Lover」といったスローナンバーに顕著に表れていて、それがアコースティック・アルバムという彼の従来のイメージとは異なったスタイルにも、違和感なく溶け込んでいるのだと思う。
そして、ここにも数曲のカバーが収められているけど、その選曲のセンスも抜群だ。
アコースティック・アルバム、とは言っても、例えばエリック・クラプトン「Unplugged」のようなリラックスした雰囲気は、ここには感じられない。
線の細いエモーショナルな歌声と深く美しいアコースティック・ギターの音色はどこまでも冷たく響き、絶えず緊張感を孕んでいる。
それはやはり、ジョニーのパーソナルが音に反映されているからなのだろう。
ただ、前述のシド・バレット然りルー・リード然り、強烈に”死”を感じさせる音像だからこそ感じ取ることができる不思議な安らぎというものもある。
それが、僕が長年スリーピング・ミュージックとしてこの作品を愛聴し続けている所以なのかもしれない。
その死の直前、音楽的にはアメリカ南部の音を取り入れようと考えていたというジョニー。
その南部・ニューオーリンズで無様に死んで伝説になってしまった彼だけど、その死を乗り越えて近年のボブ・ディランのように自分の好きな歌を気ままに取り上げてリラックスしながら音楽を楽しむ彼の姿や、緊張感を孕まないレイドバックしたアコースティック・アルバムを、僕は聴いてみたかった。
2026.3.2






