野田 明 (midd craft) ✕ 安島一樹(すぱっつ)
コーヒーもう一杯 主催スペシャル対談
前編

司会:山本タダシ(マジカルコネクション)

僕は自分の部屋のホームパーティーに招待するという感覚でイベントをやっているんです。

●まずお二人の出会いについてお聞かせください。
野田「10年ぐらい前、もうなくなっちゃったけど中日ビルの裏手にあった『cafe domina』というクラブで、僕が主催でイベントをやってたんです。その同時期に、新栄のクラブ『Buddha』で『OVER DRIVE』というロックのDJイベントがあって、僕はそこの主催者とフジロック仲間だったんですけど、そこでDJとして参加していたのが安島君だったんです。面と向かって喋ったことはなかったんですけど。その後『OVER DRIVE』のスペシャル版を『cafe domina』でやってたんです。エレキコミックのやついいちろうさんがゲストで。そのイベントに行ったら安島君がDJをやってて。中村一義の「1、2、3」をかけていたのが印象に残ってて。」
●じゃあ、すぱっつやソロを聴く前に、歌い手ではなくDJとして知ったわけなんだ。
野田「そうですね。すぱっつというコピーバンドをやっていることはmixiで知ってましたけど、そのイベントで安島君を知りました。仲良くなったという感じじゃないですけど。」
●mixiというのが時代を感じるな(笑)。その時は、安島君にどこか共感できる部分、自分に近いと思った部分があったんですか?
野田「いや、特には。」
安島「『OVER DRIVE』には僕と同級生のDJがいて、『Buddha』でやった野田さん主催のイベントに参加したんです。客はほとんどいなかったけど、DJだけが楽しく盛り上がっていたらしくて(笑)。ああ、あのイベントの主催者ねって感じで知り合って、繋がって。初めてちゃんと喋ったのは再会した『ROLLINGMAN』ですよ」
野田「あの頃の安島君は、今のすぱっつの本田君(すぱっつのベーシスト)ぐらいの体格、というイメージでしたね。すごいデカイ人、という感じ。」
●(笑)マジで?
野田「なんか、DJブースにノソーっと立っている印象がありました。」
安島「野田さんと再会した日は『ROLLINGMAN』でイベントがあったんですよ。何のイベントか1mmも覚えてないけど(笑)。平日だっけ?」
野田「そう平日。今池の『TOKUZO』にライブを観に行って、その帰りに『ROLLINGMAN』に行ったんですよ。そこに行くのはその時が初めてだったけど、何人かの知り合いが関わっていてお世話になっている店だったから前々から一回行ってみようかなと思ってて。その頃は鶴舞の『K.Dハポン』で別のイベントを立ちあげる準備をしていたんですが、それとは別にもっと緩いイベントをやりたいな、と考えていたんです。僕が普段部屋で聴いてるカントリーロックとかフォークとかのレコードをかけて、弾き語りのライブを交えてみんなで楽しむという、緩いイベントを。それで『ROLLINGMAN』はどうかなと思って行ってみたら、そこで安島君と再会したんです。あ、もしかして『OVER DRIVE』のDJのどじょうさん?って」
安島「僕はその日は『ROLLINGMAN』企画のイベントに呼ばれて、ただライブをしただけなんです。」
●それまで安島君の歌は聴いてなかったんだ?
野田「全然ないですね。すぱっつというバンドは知っていたけど、スピッツのコピーバンドだと思っていたから。スピッツのコピーバンドなら、まぁ聴かなくていいかなと思って(笑)」
安島「ハハハ!」
●じゃあ、初めて聴いたのはいつだったんですか?
野田「初めて聴いたのは、それから後、確か『鑪ら場』に行ったんです。安島君はソロで、その時は本田君と一緒にやってました。」
安島「ああ、そうそう。」
野田「その時に聴いていいなと思って。すぱっつのCDも買ってみたんですけど、それがメチャクチャ良かったんです。曲も良くできてるし、アルバム全体の雰囲気もすごく良かった。」
●さっき話にあったレコードかけて演奏もやってという緩いイベントをやりたいと漠然と考えていたわけだけど、それはいつ決めたの?
野田「その再会した日に『ROLLINGMAN』で色々話をして意気投合して。そしてすぐその場でイベントの予約をしました。」
安島「なんで意気投合したかと言うと、僕がその日に『麦茶をもう一杯』(ボブ・ディラン『コーヒーもう一杯』の日本語カバー)を演奏したんです。野田さんがボブ・ディランが好きだって言うから、今日ディランのカバーやったんですよって言ったら、そうなんだ、そういうのも聴くんだって、そこからですね。今イベント名になっているけど、ディランの『コーヒーもう一杯』が距離を縮めたのかなって。」

「コーヒーもう一杯」収録のボブ・ディラン1976年リリース『Desire』


●その時点では、イベントのタイトルは決まってなかったの?
野田「そうですね。その場で『コーヒーもう一杯』に決めました。僕はお酒よりコーヒーが大好きですから。」
●まさにうってつけだったわけだ。
安島「そうですね、流れとしてはよかったかな。」
●じゃあ安島君と出会ってなかったら違う名前になったかもしれないんだ?(笑)
野田「なってたかも(笑)。でも多分、ハポンとかへ行っても安島君の名前は絶対出てくるから、それがなくてもそのうち出会いはあったと思います。でも『ROLLINGMAN』での出会い方はすごい良かったですね。」
●いきなり仲良くなったと言うよりは、再会して仲良くなっていったのが、段階として良かったんですね。
野田「もう偶然の産物ですね。」
●そもそもの話になりますけど、野田さんってどうしてイベントをやろうと思ったんですか?
野田「今イベントをやっている理由は、基本的には僕の個人事業『midd craft』の営業活動です。でも、元々音楽好きでフジロックの雰囲気が大好きだったから、自分もああいう場を作りたいというのがずっとありました。10年前にイベントを始めた時もそういう理由です。」
●『コーヒーもう一杯』を始めたのって、いつでしたっけ?
野田「スタートは2019年の2月です。」
●じゃあ、割と最近なんだ。
野田「そうですね。いまのところ丸2年です。」
●だけど、結構なハイペースでやってますよね。
野田「いや、マジコネ(マジカルコネクション)に比べたら全然ですよ(笑)。まぁ、毎回ちゃんとフライヤーも作って、宣伝もしてますけど。」
●野田さんを見てると、芯がしっかりしているというか、こういうイベントをやるためにはこういう事をしなきゃいけないという確固としたものがあると思っているんですが、当初からやるからにはちゃんとやろうと決めていたんですか?
野田「イベントやるんだったらちゃんとやろう、1回1回を前進させる、意味のあるものにしたいというのはあります。お客さんが入る入らないに関わらず。」
●第1回目の出演者は安島君の他には?
野田「僕の昔からの知り合いにお願いしました。2回目は『ハポン』や『鑪ら場』を拠点にしている人達に声をかけて。HoSoVoSo君とかトロエッパの加藤眼球君とか。加藤君は昔からの知り合いなんです。」
●じゃあ野田さんの昔からの知り合いもいれば、安島君経由で知り合った人もいて。
野田「そうですね。」
安島「2回目って誰が出てたんでしたっけ?」
野田「安島君入れて4組。最初、安島君に声をかけたらその日は出れませんって言われて。出演者3組って決めてたから、安島君の抜けた穴をどうしようか、誰かいないかなと思って、声をかけたのがコーラスウォーターだったんです。」
●あ、そうなんだ。
野田「たまたま動画を見たら凄く良かったので直接コンタクトを取って。全然知り合いでもなかったんですけど、いきなりメールを送って(笑)。でもその時彼らは活動休止してたんです。たぶん就活の関係だったと思うけど、ライブの日までには活動再開しているから出演させてくださいって返信が来て、出演が決まりました。それでHoSoVoSo、加藤眼球、コーラスウォーターの3組で決まってたんですけど、安島君がやっぱり出れますって言ってきて(笑)」
●安島君は、こうして野田さんと知り合って、『コーヒーもう一杯』に最初から出演する事になったんだけど、野田さんに対して共感する事とかリスペクトするところはありますか?
安島「さっきも仰ってくれたけど、私の音楽を無条件に良いって言ってくれるのがひとつと、僕もイベントをやる事があるけど、イベントの趣旨がめちゃ明確なんです。」
野田「ああ。」
安島「イベントの上がりがどうのとか、お金の話とかほとんどしないし。」
●もらった金は全部出演してくれたミュージシャンに還元すると。
安島「そうそう。やっぱりそういうのって、やる側からすると安心できますね。」
野田「イベントで収益を出すというよりは、イベントをやる事自体が『midd craft』の宣伝になって、結局プラスになってるからね。」
安島「でもやっぱりいちばんは音楽的な趣味です。一緒にフジロック行って何回も会ったりしたし。一緒に行ったわけじゃないんですよ。現地で会って、今からこれ観るけど一緒に観ましょう、って一緒に SOUL FLOWER UNION 観に行ったり、大雨の中で Death Cab For Cutie を一緒に観たり(笑)。そういうところも、リスナーとして同じ匂いを感じています。僕なんかより数倍ロックな生き方をしていますから(笑)」
野田「ハハハ!」
安島「フジロック行くのも、青春18切符使って苗場まで行ってるし。」
野田「あれはお金を節約しているだけだから(笑)」
安島「あとは、実際にいろんな人を呼んでくれるじゃないですか。すごい良いなぁって思う人にたくさん出会って、コーラスウォーターもそうですけど、いろんな出会いをくれる事で、自分にとってもメリットになっているし。言い方は悪いけど、自分にプラスになることは多いなって。」
●安島君にとっては自分の魅力を引き出してくれる存在なのかな?
安島「それはちょっと恥ずかしいけど、そういうところはあります。」
●野田さんもこうしてイベントやるんだったら、他のイベントではできない、自分のイベントだからできる出演者の魅力の引き出し方というのを常に考えていますか?
野田「そうですね。イベントを毎回やるたびにテーマを決めてます。安島君は毎回レギュラーで参加してもらってますけど、ジョンレノンの命日(12月8日)にやった時には、今回はクリスマスパーティーみたいな雰囲気でやろうと思ってやりましたね。テーマを決めたらフライヤーもテーマに沿った雰囲気のものを作っています。女性の出演者が多かったら可愛い雰囲気にしてみたり。やっぱりそういう事はやらないと。」

ジョン・レノンの命日・12月8日に開催した「コーヒーもう一杯 vol.4」


●そういう事をちゃんとやろうとするのは、野田さんがミュージシャンじゃないからできるのかもしれないね。こういうフライヤー作ろう、こういう選曲を考えてこんな構成にしようって。自分が出演して演奏しなきゃない立場だと、そこまで手が回らないと思うから。
野田「ああ、それはあると思います。演奏する立場じゃないから練習する必要がないし、そのぶん他の事ができるのはだいぶ大きいですね。やっぱり自分も音楽をやっていると、自分とカラーが違うミュージシャンとやるのは違和感があるから一緒にはできない、というのがありそうですけど、僕はそういうのがないから自由だな、と。」
●なるほど。安島君にとって『コーヒーもう一杯』とは何ですか?
安島「うーん、僕はぶっちゃけ自己評価は低いんで、良いと思って呼んでくれる時点でありがたいです。自分がやっていることが認められている感がすごいあるんですよ。毎回絶賛してくれるし。演奏だけじゃなくDJもやらしてくれるしね。野田さんのかける曲に僕が興味を持ったりして。たまに何の反応も示さないと、今日は反応なかったねって言ってくるし(笑)」
野田「(笑)」
安島「僕にとって『コーヒーもう一杯』は偶然の産物とはいえ、自分のやっていることを認めてくれたっていうのはあるから。イベントのサイクルは結構早いんだけど、よっぽどのことがない限りは出たいと思うイベントです。」
野田「本当、安島君は自己評価低いよね。」
安島「メチャクチャ低いですよ。」
●何でそんなに低いの?
安島「わかんない。性格なのかもしれないけど。」
野田「まあ、それが安島君らしいんだけど。でも、作る歌はすごい魅力的なのにね。」
安島「自信はないですね。音楽に関しては。」
野田「自信家になっても困るけど、もう少し自信を持ってもいいんじゃない(笑)。でも、だからこそ慕っている人は多いと思うんですよ。謙虚だから。こういう人だからイベントを一緒にやっているととても助かります。」
●野田さんはこれから『コーヒーもう一杯』をこうしていきたいという展望はありますか。
野田「特にはないんですけど、その都度その都度良いミュージシャンがいたらどんどん出演をお願いしたいと考えてます。例えば、ぜひ出演してもらいたいミュージシャンがいたら、その人と(音楽的に)似たようなテイストの人をもう1組呼んで、そこに安島君を加えて、という形でやりたいです。特に展望は特にないけど、ずっとやり続けたいという気持ちはあります。」
●なるほど。
野田「僕は自分の部屋のホームパーティーに招待するという感覚でイベントをやっているんです。誰か友達来ると部屋を掃除して、レコードもかけたりじゃないですか。そういう楽しい感じ。」
●他にもイベントやっているけど、他との線引きというのはその緩さなのかな?
野田「そうですね。現在休止している『あなたと夜と音楽と』というイベントについては、ショーとしてプロフェッショナルな感じでやってましたけど、肩の力を抜いてやってるのは『コーヒーもう一杯』ですね。」
●自宅に人を呼んでやるのと、どこかの会場借りてやるのとの違いみたいな。
野田「そうそう、そんな感じでこれからもやっていこうかな、と。」

イベントでは美味しいハンドドリップコーヒーの販売もある。