僕の音楽の拠り所
確か2005年頃だったと思う。
とにかく日常は音楽中心、給料の大半をCD購入につぎ込んでいた僕は、ついに自身の音楽ホームページを立ち上げた。
その名は「音楽 Web 茶房 “珈琲マインド”」
70年代のフォークロック・バンド、銀河鉄道の曲名から名付けたそのサイト名は、現在は僕の運営するCDショップに流用させてもらっている。
そこから遡る2年ほど前に、妹が学生時代に使っていた富士通のバカでかくバカ重いデスクトップパソコンを貰い受け、僕はパソコンを始めた。
色々調べながら自宅にインターネット(ADSL!)を引き、妹の旦那の指導で Windows Me の OS をインストールして何とか稼働させたパソコンは、動作が非常に重くゲームはおろか動画の再生もままならないような、当時の Windows XP が主流の時代からみてもヒドいシロモノだったと思う。
しかし、世界中のウェブページとつながったインターネットはもちろん、音楽データを圧縮してハードディスクに保存したり、カセットテープやMDのように自分の好きな曲を詰め込んだ CD-R を作成できたり、そのスーパー・ロースペック・パソコンでなし得ることでも、音楽好きの僕を感動させるには充分だった。
その当時の2000年代前半ぐらいは、全国的にもパソコンの個人利用率が急増しだした頃で、ブログやホームページの開設がブームとなっていた時期だ。
今は懐かしき mixi がブームとなる前であり、SNS と呼ばれるサービスはまだ一般的に知られていなかった。
有志が音楽を語るややマニアックなページをよく閲覧していた僕は、次第に「僕にもこれできないかな?」と思うようになる。
とは言え、その当時のスーパー・ロースペック・パソコンではさすがに力量不足。なので、妹に使っていないデジカメを借り、虎の子の CD をヤフオクでせっせと売って、理想の自作パソコンを作るべく購入資金を貯めていった。
そして2005年の愛知万博の年の春、ベアボーンキットやモニターやパーツなどを揃えて作ったパソコンに、念願の Windows XP をインストールし、僕の新たなパソコン生活は幕を開けた。
図らずも、それは僕が今につながる家具職人としての修行を開始した時期と被る。
ちなみに僕はこの後4回ほどパソコンを買い替えているけど、それはすべて自作のデスクトップで、メーカー製のものをメイン使用として買ったことは1度もない。 (サブ使用で ASUS のミニノートを中古で買ったことはあるが)
当時の個人のホームページは、ホームページビルダーなどのソフトを使うか、HTML というプログラミング言語でテキストを書いて作るかのどちらか。サーバーがテンプレートを用意してくれる今のような環境では無かった。
どういったことでも可能な限りお金をかけないことを是とする僕は、Windows の標準ソフトである「メモ帳」だけで作れる HTML を入門書でマスターし、ようやく夢に見た自身のホームページ「音楽 Web 茶房 “珈琲マインド”」を立ち上げたのだった。
しかし、立ち上げて半年ほどでページは停滞していった。
飽きたのではなく、家具職人の修行が過酷であったためだ。
長い労働時間もさることながら、自分の仕事上の勉強もあり、とても片手間でページ作りを行える状況では無くなっていった。
程なくして僕はページのデータを今は無き「Yahoo!ジオシティーズ」から引き上げ、ホームページを閉鎖した。
それから15年後、ページのデータをそのまま保存し続けていた僕は、コロナが猛威を振るい始めた2020年の5月に、加筆と訂正を施した上で「珈琲マインド」を復活させた。
そのまた2年後の2022年、7月に新たにここ「Peaceful Easy Feeling」を立ち上げた。
当然ながら、パソコンを巡る環境は15年前と比べ激変していて、このサイトについては現在の個人ホームページ運営の主流である WordPress を利用して作成している。
昔はせいぜい画像データや文字にハイパーリンクを貼り付けるくらいが関の山だったが、今はページ内に You Tube 動画や Spotify や SoundCloud のプレーヤーを設置しての視聴が可能となっていて、音楽についてのページを作るにあたっては実に申し分ない。
もちろん、僕自身の環境もあれからだいぶ変わり、家具職人の修行を終えた今は個人で仕事をしながら音楽イベントの主催やCDショップの運営をしている。
そのへんの活動を包括した「和みの音楽ポータルサイト」として、新たにホームページを立ち上げた次第だ。
ちなみに、このサイト名はイーグルスの有名なナンバーから拝借した。
言葉の響きが美しく、曲自体もドゥービー・ブラザーズの『Listen To The Music』や C.C.R の『Have You Ever Seen The Rain』と並ぶ、70年代アメリカンロックを代表する、穏やかでエバーグリーンな名曲だ。
今ではブログも主流ではなくなり、若者は SNS からも離れていく時代である。
上記で上げた有志のマニアックな音楽ページも、久々に訪れてみたら最終更新日が10年以上前であったり「404 Not Found」となっていたりで、時代の流れとはいえ少し寂しい。
個人のホームページでの情報発信などもはや時代錯誤なのかもしれないが、僕にとってはホームページこそが一国一城であり、育てていく我が家だ。
現在15回の開催を数える主催イベント「コーヒーもう一杯」と同様に、この「Peaceful Easy Feeling」は、僕の音楽の大切な拠り所になっていくことだろう。
とは言え、ちょうどひと月前に立ち上げたこのサイト、フジロック直前で個人的にバタバタしていたので、オープン以降更新がおざなりになっていたが、今後はショップやイベント情報以上に、僕が紹介したい名盤・名曲・ミュージシャンのテキストをどんどんアップして、ちょっとしたディスクガイドになるような、音楽のデータベース的な場所にしていきたいと思う。
どうか、気長に見ていただきたい。
2022.8.21