銀河鉄道 (1975)

銀河鉄道

銀河鉄道

Milky Way : FW-5002

side A

1. 唄をひとつ
2. 想い出してごらん
3. 春はゆっくりと
4. 珈琲マインド
5. 銀河鉄道


side B

6. ポカポカ陽気に
7. 君の扉
8. 雲がいつのまにか
9. 忘れかけた季節
10. もとどうり

70年代東京のポップバンド・銀河鉄道が1975年にリリースした(当時)唯一のアルバム。
現在まで脈々と続く「はっぴいえんどフォロワー」の第一世代にあたるバンドで、当時の英米のシンガーソングライターやウエストコースト・ロックを充分に咀嚼して血肉としたハイクオリティな楽曲の数々は、レコーディング当時にメンバー全員が高校生だったとは到底思えない完成度の高さだ。
にもかかわらず、日本のロックの歴史を紐解く際に、その名前はほとんど顧みられることはなかった。
そんな彼らが世の音楽好きに広く認知されたのは、2003年に「喫茶ロック」シリーズでCD復刻されてから。
『70年代のサニーデイ・サービス』という本末転倒なキャッチコピーのとおり、実際彼らのファンの多くは90年代のサニーデイ・サービスやホフディランなどのフォーキーなバンドを愛聴していた、このレコードがリリースされた当時に生まれた僕の世代の音楽好きだと思う。

プロデュースは、はっぴいえんどの松本隆や細野晴臣が在籍していた伝説のロックバンド・エイプリルフールの鍵盤奏者で、70年代当時に数多くの名盤に携わっていた柳田ヒロ。
他にも坂本龍一や後藤次利など錚々たるミュージシャンが名を連ねているものの、これを名盤たらしめているものは何より楽曲の魅力に尽きる。
牧良夫・本田修二・佐藤信彦という3人のソングライターによる楽曲はいずれも、今聴いても古さを全く感じさせない普遍的な魅力を携えている。
アコースティックギターの響きがセンチメンタルな雰囲気の「唄をひとつ」に始まり、”ニール・ヤングを聴いたらぼくのこと思い出して”というラインにハッとさせられる爽やかなアーリー・シティポップ「想い出してごらん」、メキシカンなフィーリングが楽しいカントリー・ロック「春はゆっくりと」、珈琲の湯気が香ってきそうなエコーがかかったアレンジが素晴らしい「珈琲マインド」、吉田拓郎にも通じる郷愁感を感じさせる「雲がいつのまにか」など、サウンドはバラエティ豊かでほぼ全曲が名曲。
同年に発表されたシュガーベイブの『SONGS』と比べても、遜色は微塵も無い。
これほどのレコードが当時話題にならずに、知る人ぞ知る名盤として語り継がれるというのは、やはり早すぎた作品ということなのだろう。

はっぴいえんどフォロワーというものの、先輩のようにどこかニヒルで人を喰ったような感覚は無い。その辺はやはり若さゆえか。
コアなはっぴいえんどファンには物足りないかもしれないが、僕はむしろその初々しさが残る空気感がとても心地よい。
CD復刻から更に20年近く経ってしまったが、現在でも never young beach などが好きな人には充分にアプローチできるだろう。
今一度の復刻を望む次第だ。

2022.7.5