The Band / Music From Big Pink (1968)

The Band

Music From Big Pink

Capitol : ST-2955

side A

1. Tears Of Rage
2. To Kingdom Come
3. In A Station
4. Caledonia Mission
5. The Weight


side B

6. We Can Talk
7. Long Black Veil
8. Chest Fever
9. Lonesome Suzie
10.This Wheel’s On Fire
11.I Shall Be Released

言わずと知れたロックの名盤にして、アメリカン・ルーツロックの原点であり最重要作品。
発売当時のセールスは芳しくなかったそうだが、同世代や後世のロックに与えた影響はビートルズの「Sgt. Pppers」にも匹敵するだろう。

僕が初めて聴いたのは、確か高校1年くらいで、パンク以外の洋楽ロックを聴き始めた頃。
サブスクはもちろんインターネットも無い時代、マメな音楽好き少年だった僕は、音楽雑誌の特集や鹿児島の市立図書館にあった名盤ディスクガイドなどを読み、CDレンタルなどを利用してロックの名盤を聴き漁っていた。
そんな時期にぶち当たった作品の一つが、このザ・バンドのデビューアルバムだ。

正直、当時の僕にはわからなかった。
パンクのエモさとスピード感に耳馴染んだ僕の耳には、このなんだかジジくさい雰囲気がかったるく感じたものだった。高1ならば無理もない。
その芳醇な音楽の魅力がようやく理解できたのは20歳ごろ。
ちなみに、ツェッペリンやジミヘンの素晴らしさがちゃんと理解できたのも、だいたい同じ頃だ。

売れないロカビリー歌手のバックバンドが、とある縁でボブ・ディランと出会い、ウッドストックでのセッションを重ねるうちにその芳醇な音楽性を獲得し、この傑作が生まれた。
ブルーズ、カントリー、ゴスペル、ケイジャン…さまざまなルーツ・ミュージックを吸収して出来上がったサウンドの大らかな雰囲気は、真夜中の広大なアメリカの荒野を連想させる。
個人的なベストトラックは、やはり「The Weight」だろう。
ゆったりとしたタイム感と、サビのややドラマチックな感じが最高な名曲である。

あと、やはり気になるのはこのジャケット。
名盤として名だたる作品なので今更という感じだが、ボブ・ディランが描いたというこのイラスト、5・6歳ぐらいの子供の絵にしか見えないのは、芸術的センスに乏しい僕だけだろうか?
ザ・バンドのメンバーが演奏している風景を描いたのわかるが、右端の象は一体なぜ?

ディラン「君らのデビュー盤のジャケット描いたから。これ使いなよ。」
ザ・バンド「えっ、これ…マジすか…」

こんなやりとりがあったことは、想像に難くない。

とはいえ、やはりこれは超名盤。
聴けば聴くほどに濃厚な音の旨味が滲み出るかのようなこの作品、夜に熱い濃いコーヒーを啜りながら聴きたい素晴らしいレコードだ。

2022.7.6