Bob Dylan
Biography
1941年に米ミネソタ州で生まれる。
ウディ・ガスリーの影響で歌い始め、1962年にデビュー。
翌年発表の「風に吹かれて」で時代の寵児となり、以来60~70年代にかけて「追憶のハイウェイ61」「ブロンド・オン・ブロンド」「血の轍」などの傑作アルバムを次々にリリース、1988年からの「ネバー・エンディング・ツアー」と題された精力的なライブ活動と併せ、ロック・シーンを牽引する。
2016年には独特な歌詞が評価されノーベル文学賞を受賞。
僕がボブ・ディランを聴き始めたのは、大好きなブルーハーツの影響でビートルズやストーンズなどの60年代音楽に興味を持った中3の頃だったと思う。
確か、当時ショッピングセンターのワゴンセールとかによくあった「ベスト・アーティスト・シリーズ」などのタイトルが付いた、日本独自編集の得体の知れない1000円CDを購入したのだ。
ディランの他にもサム・クックやジミヘンやキンクスなどもあったあの手のCD、これらの音源って90年代初頭にはまだパブリックドメインでは全然無かったはずだから法的にはアウトのはずなのに、どういうことなんだろう?
それはさておき、収録されていた曲は「Like A Rolling Stone」「Mr.Tambourine Man」「Just Like A Woman」「Positively Fourth Street」など、悪くなかった(音は悪いけど)。というよりも、選曲は傑作ベスト盤『Bob Dylan’s Greatest Hits』とほぼ同内容なので当然なのだが。
その後「Blowin’ In The Wind」が収録された『The Freewheelin’ Bob Dylan』のCDを購入。
「ボブ・ディランは歌詞が凄い」という評判を聞き及んで、やたらと文字数の多い中村とうよう著のライナーノートをクリアケースの下敷きに入れて、学校で一生懸命読んでいた覚えがある。
2016年にノーベル文学賞を受賞してしまうほどに奥妙な歌詞が評価されて、ロックにおけるメッセージの重要性を証明し続けてきたディラン。
しかし日本人である僕は、歌を聴く限り歌詞の意味など正確に理解できない。
普段聴きするにあたっては、わざわざライナーの対訳を読みながら聴くわけではないから当然ではあるが、それでも普段からレコードやiPhoneでディランの名盤はよく聴く。
ということは、僕はディランの音楽家の面が好きなのだろう。
彼は偉大な詩人である前に、優れたメロディーメーカーでありシンガーなのだ。
60年代から現代に至るまでリリースされ続けている傑作の数々には、ディラン節とも言える哀愁漂うメロディーと、アメリカン・ルーツ・ミュージックに根ざした音作りの素晴らしい名曲がぎっしりと詰まっている。
件のノーベル賞をリリースした翌年の2017年には、全曲アメリカのスタンダード・ナンバーのカバーで構成された3枚組『Triplicate』をリリースした事実も「俺はただの歌うたいさ」と暗に言っているようで、なんだか痛快である。
2018年のフジロックで、僕は初めてボブ・ディランを生で観た。
主催者の計らいで、トリではなく夕暮れ時に登場したディラン。
「Don’t Think Twice, It’s All Right」が夕焼けの苗場に緩やかに鳴り響いていた夏の思い出を、僕はずっと忘れることはないだろう。