佐野元春
Biography
1956年生まれ。80年デビュー。
82年に「サムデイ」の大ヒットによりブレイクを果たした後、単身渡米して制作した革新的作品『Visitors』では日本語でのラップに取り組み、英国レコーディング作『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、ウッドストック・レコーディング作『THE BARN』など、常に音楽スタイルを更新し続けて幅広い世代からの支持を得ている、唯一無二のミュージシャン。
活動歴40年を過ぎた現在でも THE COYOTE BAND を率いて、ライブ活動や作品制作など精力的に活動中。
僕が佐野元春を知ったのは、高校の頃にドラマの主題歌としてヒットした『約束の橋』だった。
当時のタイアップ曲にしては異質な、端正ながらもかすれ声の、少しぶっきらぼうな歌い回しがワイルドなその曲は、当時の日本のヒットチャートに氾濫していた当たり障りないヒット・ソング(J-POPという名前はまだなかった)と違って、とてもクールで粋に思えた。
早速、CDレンタルで借りてきて聴いてみると、件の曲以外の楽曲も素晴らしいものばかりで、あっというまに彼の虜になってしまった。
近年、日本の80年代のシティ・ポップが世界的にも再評価されて久しいが、ご多分に漏れず佐野元春もその文脈で語られることが多い。
代表曲の「サムデイ」はもちろん、「二人のバースデイ」「バルセロナの夜」「NIGHT LIFE」「ワイルドハーツ」など、シティ・ポップ的な名曲も多数あるけど、彼の楽曲にはやっぱりどこか型にはまらないアウトローな雰囲気がある。
ドライブのBGM的にさらっと聴くのではなく、なにか心をかきたてられるものがあるのだ。
ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ルー・リード、エルヴィス・コステロ、ニック・ロウ…
様々な偉大なミュージシャンのシルエットが透けて見える素晴らしい名曲群の数々は、いずれもインディペンデントなスピリットで溢れている。
デビューから40年以上経ち、常にフレッシュな音を届けてくれる佐野元春の作品は名盤だらけだ。
エピック時代の初期3枚はもちろん、日本語ラップの先駆けとなった『Visitors』、エルヴィス・コステロのバックバンドと組んだ英国録音作『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、ウッドストックの伝説的なスタジオでザ・バンドのメンバーとレコーディングした『THE BARN』、近年のメイン活動・THE COYOTE BAND と作り上げた大人のロックンロール・アルバム『BLOOD MOON』など、枚挙に暇がない。
その中でも僕のフェイバリットは、都会をサヴァイヴするためのサウンドトラック『Heart Beat』と、英国的な端正な雰囲気が心地よい『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、そしてアーシーな音作りと洗練さが絶妙な『THE SUN』の3枚だ。
ミュージシャンはもちろん、俳優や芸人やラジオパーソナリティーなど、クリエイティブな人達に彼の熱烈なファンが多いことは、よく知られている。
その感じはとても良くわかる。彼の名曲を聴いていると、何かしらインスピレーションを得られるような気がするからだ。
しかし、そこに留まらず彼はもっと大衆的な人気を得てもおかしくない。
個人的には、山下達郎や桑田佳祐に並ぶ、ジャパニーズ・ミュージシャンの重鎮だと思う。
初めて聴いて以来、僕にとって常に憧れの存在である佐野元春。
もっと世間的にも正当な評価を得られるべきだと、いつでも僕は思っている。
2022.6.6