RCサクセション / 楽しい夕に (1972)

RCサクセション

楽しい夕に

Express : ETP-8216

side A

1. ラーラー・ラ・ラ・ラ
2. エミちゃんおめでとう
3. 忙しすぎたから
4. あの娘の悪い噂
5. 九月になったのに
6. ねむい


side B

7. もっとおちついて
8. 君もおいで
9. 去年の今頃
10. 日隅くんの自転車のうしろに乗りなよ
11. ぼくの自転車のうしろに乗りなよ

アコースティック・トリオとしてデビューした忌野清志郎率いるRCサクセションの、1972年発表のセカンドアルバム。
デビューアルバム『初期のRCサクセション』と名曲「スローバラード」を収録したサードアルバム『シングルマン』に挟まれ、特に代表曲も収録されていない地味なアルバムではあるけど、2000年代に雑誌『SNOOZER』の企画「日本のロック/ポップアルバム究極の150枚」にて1位に選出されたことで、後年に再評価された作品だ。

時代を反映したメッセージソングなども収録されていた前作とは違い、歌われる内容はどの曲もごくごく私的なもの。
サウンドについても、盟友の古井戸のようなゆったりとしたカントリータッチなフォークロックの趣きで、若さに任せて多少前のめり気味だった前作とくらべたら、だいぶ落ち着いた雰囲気である。

しかし、その根底にあるのはゆるやかな絶望感と虚無感。
80年代にロックバンドとして大ブレイクする前の売れなかった不遇の時代が反映されたやるせない日々の風景が、あの清志郎独特の毒の効いた口調で気だるく歌われている。

ジャグバンド風の「ラー・ラー・ラ・ラ・ラ」、楽しげなフォークポップ「エミちゃんおめでとう」、夕暮れ感が切ない「忙しすぎたから」、悲痛な叫びに胸が痛くなる「九月になったのに」「もっとおちついて」などなど。
後にロックバンドとして再編され、全国規模での快進撃を果たして80年代を駆け抜けたRCだが、その時にロック少年・少女達の心を鷲掴みにした清志郎の作風は、実はこの頃からあまり変わっていないことが、これを聴けばよくわかるというものだ。

個人的には、休日の午後に家でダラっと過ごす時にターンテーブルに乗せることが多い。
ラフなフォークサウンドにのせて歌われるやるせない日常の風景。
それが、現代の僕の耳には心地よかったりするのだ。

2022.6.7